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まえがき
はじめに
いじめ被・加害者の予知発見とサポート
MHIサポート
予防(自学の習慣化)
事例
後記
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 MHIサポートは、自ら生きる力を獲得し自学を習慣化して、生涯発達の基盤をどう実現するかが重視される。被支援者のMHI情報を統合して、メンタルヘルスの発達状態を理解して、サポートの指針を立てる。指針に従い、休養、プレゼンス(人がそこにいる事)、無条件の肯定的関心、傾聴、共感的理解(受容)、正当の行動の支持・保証、要求に応じた説明、必要に応じた諭し、共に学ぶなどの手立てを用いて、被支援者中心のコミュニケーションを行う。

 このサポートにより、被支援者が自ら安心、共感、肯定的自己イメージ、信頼、意欲、自信、尊敬とういうメンタルヘルスを学び、マナー、ルール、モラル、能動学習、教師あり学習を獲得し、自学を習慣化し、生涯発達の基盤の獲得をめざすのである。

 サポートを行う対象と場から、個人のMHIサポート、家庭のMHIサポート、学校のMHIサポートおよび地域のMHIサポートとした。
 
 支援者は、被支援者のMHI情報を統合して、メンタルヘルスの発達を理解し、サポートの指針をたて、共感的コミュニケーションを行う。「頑張れ」と「甘えるな」は言わない。葛藤の解決や、葛藤状況から離れることなど、原因に対する対応が必要の場合もある。

2.1.1. 理解と指針
  被支援者の心をわが心とするために、支援者は、自分の心の世界に舞台を設け、被支援者のMHI情報(1.いじめの予知発見とサポートの章の摘要欄参照)のドラマを被支援者を主人公にして演じさせる。舞台の広さや豊かさ、演じるドラマの質や量とその進行、共演者との相互関係と相互作用、流れる音楽や照明も想像する。そして、観覧後の感想から第2幕を予感する。この作業は情報を統合し、被支援者をより深く理解し、被支援者が、自らメンタルヘルスを学ぶために必要なサポートとその指針を想起することができるのである。

2.1.2. サポート
  安心・共感・肯定的自己イメージ・信頼・意欲・自信・尊敬の確立をはかる。指針に基づく共感的コミュニケーション行動に対し、被支援者は関心を向け、味方と感じられる行動に安心し、不安や不満を共有する行動に共感する。支援者は、共感する事象を次々に創る。この積み重ねによる豊かな感情の持続から、肯定的な自己イメージを学び、自己の考えを非言語的・言語的行動で表現するようになるから、その行動を受容し、正当の行動を支持し、正当の考えを保証する。共感・支持・保証のコミュニケーションから、被支援者は、支援者の説明・諭し・教えを受け入れるようになる。この信頼を積み重ねた人格のふれ合いから、相互に尊敬の念が成立するのである。この一連のメンタルヘルスを学んだ子ども集団相互の交流から、自他の主張を認め合うルールを学び、成員性を学ぶ。他者認知と自己認知の相互関係から、思いやりが芽生える。支援者の諭しや教えからマナーを学び、自己の一貫性が時間的・空間的に成り立ち、それが、友だちや学校からも認められていること、即ち自己同一性(Self Identity)を学ぶ。そして、外的強制力を伴わず誰にでも承認されている成員相互間の行為を規制する規範、すなわち内面的社会化(モラル)を学ぶのである。

 MHIサポートは、理解(受容)に始まり理解(受容)に終わるといっても過言ではない。大人より純粋で敏感な感性を持つ子どもたちは、大人の行動を敏感に察知して、味方であるか否かを本能的に見分ける。味方と認知した大人の諭しに共感し、様々なサインを発してくるから、敏感に察知して受容する。そして、正当の行動を支持し、正当の考えに保証を与えることから、相互信頼が構築され、善悪をも学ぶのである。この信頼は彼らに、この地域に生まれ、この学校で学ぶことができてよかったと感動し、さまざまな健康行動を自発させるから、これを支持し保証を与えていくのである。また、大人は自己の性格を子どもたちに示し理解を得て、互いに尊敬し合える関係を成立させておかねばならない。まず、大人が子どもに学び、そして、子どもが大人に学ぶのである。

2.1.3. 大脳機能とMHIサポート
  安心することにより、大脳辺縁系―大脳学習(能動学習)が可能になる。能動学習とは、2〜3歳で母国語を覚えてしまう、先天的学習能力をいう。信頼を学ぶことによる自発する意欲は、教師や父母に依存し、小脳―大脳学習(教師あり学習)(川人光男:脳の計算理論119〜232,産業図書KK,1996.)を可能にし、基礎学力を習得する。教師あり学習とは、音声を含む運動器と感覚器を活用する学習であり、運動技術、読書、作文、数学などを繰り返して行う学習をいう。相互の信頼と尊敬の上の教師の授業は感動的であり、学問への興味を高め、大脳学習(自学)を可能にする。

 信頼・尊敬が成立した関係のもとにおいて「ほめる」と、大脳内にドーパミンが分泌されて安定した精神になり、他者の行動を受容し豊かな人格を形成していく。「諭す」ことも同様の効果がある。「叱る」ことも信頼・尊敬が成立した関係においては効果がある。しかし、信頼・尊敬が成立した関係では「叱る」のではなく「諭す」ことになるであろう。一般に「叱る人」から「叱られた者」が肯定的な自己イメージを学ぶことは困難である。

 MHIサポートを用いた学習体験には、“さわやかな心になる”などの感動をともない、また、MHIサポートを用いた学習の成果には、“新しい心の世界”などの覚醒をともない、向学の念を高める。それ故、MHIサポートを用いた学習は、少しの努力で学習が習慣となり、人の性行に大きく影響し、自己同一性とモラルが強固になり、自学を獲得する。自学は、創造性豊かな生涯発達を導くのである。MHIサポートの目的は、生涯自学=生涯発達の獲得である。

2.1.4. MHIサポートの必要性
  18年余のMHIと面接の平行調査とサポートの検討・考察から以下のことが言える。文明により、豊かな生活を獲得した社会は、規範を開放し、自己を優先し、愛情・信頼・尊敬を低下させ、子どもの発達に一番必要な心のぬくもりや敬愛心をはぐくむ場所を喪失した。子どもたちは不満や不安をつのらせて、感情の発達に歪みをもたらし、ブリッ子、無気力、無関心から、いじめ被・加害・不登校・自殺・他殺などを引き起こしたのである。規範開放・自己優先社会においては、親の命令的躾と教師の管理・指導教育を行っても、子どもたちは、受け入れないのみならず、無意識的に反抗しているのである。

 MHIサポートは、サポーターのサポートに導かれて、自ら生きる力を学ぶのである。この学びには、感動と覚醒をともない、少しの努力で学びが習慣となる。習慣化した、身体行動(朝食を摂取して登校するなど)と、精神心理行動(家庭・学校で学習することなど)は、その子どもの性行に大きく影響し、第2の天性となる。MHIシステムの目的である自学の獲得は、生涯発達をもたらし、心豊かであり、社会のモラルを保持し、健全で健康な社会形成に寄与することができると考える。

2.1.5. 学歴社会の弊害
  1970年以降の中学・高校における偏差値教育の推進は、「教師あり学習」の指導強制であった。受験勉強に疲れ果てて入学した大学教育も、信頼・尊敬の低い「教師あり学習」が中心であり、自学の習慣を獲得することなく卒業した学生も多かったと推察された。そのため、現今の社会を担う成人には、モラルハザードの人や自学の未発達者が見うけられる。すなわち、指導されたことしかできない人が多いように思われる。1990年代の「ゆとり教育」は、規範開放社会にゆとりを与えたため、児童生徒は、不満や不安に目覚め、感情発達の歪みを強化し、うつ、パニック・強迫障害様となり、不登校、フリーター、いじめ被・加害などの増加を誘発し、自殺・他殺の引き金となったと考えられた。

 文明は、生産手段の発達をもたらし、生活水準は上り、人権尊重と機会均等などの原則が認められる近代化社会を形成したが、K.ローレンツ(1973)によれば、文明化した人類の8つの大罪として、1.人口過剰は攻撃性を増大させた。2.自然を破壊し、自然への畏敬の念を喪失させた。3.競争の激化。4.感情の萎縮。5.遺伝的衰弱。6.伝統を破壊し世代の対立をもたらした。7.教化。8.軍拡を挙げた。
 
 父母はMHI情報を用い、子どものメンタルヘルスを理解する。そして、子どもが父母きょうだいといつも心が通い合っていると感じるようにする。また、父母は、自ら健康行動を行い、子どもはそれを見習い、自ら習慣化するようにサポートする。

 具体的には、
a) 夕食時の一家団欒(テレビを消して、夕食をとりながら父親は家族をねぎらい、母親はその話しに協調し、子どもの今日の出来事をきき、喜び、悲しみ、また、諭すのである)。

b) 夕食後、居間の照明やテレビを消して家族全員の黙想を10〜20分間行う。これは各自の1日の反省が行われて、明日への糧となる。

c) 団欒後、父親は日記、母親は家計簿をつけて、子どもが自ら勉強にとりかかれる雰囲気をつくる。

d) 低学年の小学生には親子読書20分(親が読んで子どもに聞かせ、子どもが読んで親が聞く)。これは、親子の絆を強固にする。

e) 家族で相談しテレビ視聴時間をきめる。家族の民主化であり、きめたことは守ることを教えるのである。

f) 家族のテレビゲーム競争(土曜、週1回、30 分とし、成績をつけて1カ月の優勝者に親子の手作り賞品を授与して技能を競う。親も勝たねばならない)は面白く、親子の絆の強化と、テレビゲームの弊害を除去する。

g) 授業参観(家庭と学校の協調)。
 
 教師は、個人のMHI情報を用いて、個人のメンタルヘルスを深く理解し、児童・生徒が安心して、学校生活ができるようにする。そのために、教師は積極的に自己の人格を示して、相互理解をはかり、信頼・尊敬関係を確立しておく必要がある。

 敏感な子どもの感性をいつも受信し、まなざし、スキンシップ、問いかけ、応答などを用いて共感的コミュニケーションをはかる。発言の少ない子どものコンタクトをよくとることが大切である。

 授業において、子どもの感情を受容して意欲をたかめ、精神・身体行動を受容し、正当の行動を支持し、正当の考えを保証し、要求に応じて説明し、必要に応じて諭し共に学ぶのである。子どもが学びに感動し、覚醒するようにする。

a) クラス全員が感動する授業。

b)個人間のコミュニケーションをはかる授業。

c)
個人の良い事柄を他の個人に発言させ合う。

d)
授業や部活の楽しいこと、つらいことなどを発表し合う。

e)
正直で他者に親切、そして努力することは良いことであることを教える。

f)
学校の勉強は、この地区の人たちが働いた税金で行っていることを教える。

 子どもの誕生日にクラス担任教師は、朝のホームルーム活動において、自筆の「誕生日を祝う文章などをしたためた“栞”を送り、クラス全員で祝う。 クラスのピクニックに父母の参加を要請する。身長・体重測定や校医の健康診査に母親の参加を図る。運動会などに地域伝統文化や大人の文化活動の参加を図る。
 
 地域は、子どもたちを守っていることを子どもたちに感じてもらうサポートを行う。

a) 近所の家庭と親子ぐるみのコミュニケーションを深める。

b)
子ども会の活用、親子ぐるみのピクニックなど。

c)
地域文化行事への家族ぐるみの参加。

d)
市町村長、市町村議員は、授業参観、学校保健委員会や父母会にオブザーバーとして参加する。

e)
学校行事への住民参加。

f)
学校行事へ地域の伝統文化の参加。

g)
 子どもが不満や不安を持たない家庭・学校にしなければならない。

h)
住民が登下校の安全をはかり、子どもが感謝する関係をつくる。